2011年8月25日木曜日

「なでしこ」論 その2

先回、「なでしこ」のネーミングに異論を唱えたが、寄せられた反応はさまざまで、なかなか興味深かった。私のように、「大和なでしこ」の歴史的イメージをぬぐい切れない人たちは、やはり年配者が多いようだ。歴史的由来を知らない若い人たちは当然のことながら違和感もない。そして、その中間に、当初は「なでしこ」名に違和感を持っていたが、時と共にその名になじんで、今やこの名も良いのではないかと思う人たちがいる。多分「なでしこ」に新たなイメージを見出しているのだろう。

びっくりしたのは、「大和なでしこ」の意味も、植物としてのなでしこも知らない人たちがけっこういるらしいということ。なるほどね、昔は、庭の片隅にひっそりと咲いているなでしこを見かけることもあったけれど、今や都会では庭自体がなくなりつつあるし、花屋に行ってもなでしこはあまり見かけないことを思えば、無理もないかも知れない。傑作だったのは、大和なでしこは人名で日本武尊とカップルだったと理解していた人もいたことだ。

ところで、「なでしこジャパン」に関して、いろいろなニュースを漁っている時に、新聞で小さな記事を目にした。それは日本サッカー協会の「なでしこジャパン」に対する報奨金に関わるものだ。ご存知のように、日本サッカー協会は、21人の女子選手全員に一人当たり、650万円の報奨金を出した。女子W杯で優勝した場合の規定、150万円に加え、500万円の特別ボーナスを合わせて650万円という訳だ。この額が多いか少ないかは私には分からない。けれど、私が驚愕したのは、男子日本代表がW杯で優勝した場合は、一人、5000万円の報奨金が貰えるように設定されていると言うことだ。男子と女子でこんなに差があるのは一体どういうわけなのだ。それとも男子がW杯で優勝するのはまずありえないから、言うだけ言っておくということなのだろうか?

もちろん、ゴルフでもテニスでも、男性選手と女性選手の賞金額には差がある。けれども、これは民間のスポンサーがすることだ。男性選手の試合のほうが、女性選手の試合よりも、人気が高く視聴率も高ければ、それは「商品価値」がより高いわけだから、より高額の賞金を設定することになるのは理解できる。けれども日本サッカー協会は、サッカーの振興を目的とし、文部科学省を監督官庁とする財団法人だ。その協会が、男女のサッカー選手にこれだけの差を付けるということは、いったいどのような理由がその背景にあるのか、協会ならびに、文部科学省にぜひ聞きたいものだ。

それにつけても残念なのは、マスコミの対応だ。この報奨金の差が何に由来するのか、それを追及した記事は残念ながら目にしていない。それどころか、ほとんどの場合、インタビューアーは、サッカー選手としての技量や精神面を掘り下げていくよりも、彼女たちの個人生活に入り込み、恋愛や結婚観を聞きたがる。プロとしての選手たちへの関心よりも、「女」として、あるいは「隣の女の子」としてしか、彼女たちに接することができないのだ。マスコミの鈍感さとプロフェッショナリズムの軽視は情けない限りだ。