2013年5月15日水曜日
「私たちは彼らのことを知らなすぎた」 〜難民鎖国の日本の実情〜
アメリカ53%、韓国11.7%、日本0.3%。この数字が意味することを知っている人は、ほとんどいないのではないだろうか。もちろん、私自身も知らなかった。根本かおるさんの新著、「日本と出会った難民たち」を読むまでは。この数字は2011年度の難民認定率*の各国比較である。難民認定率とは、難民申請している人が認定される率。0.3%の意味するところは、日本では難民をほとんど受け入れていないと言うことだ。1981年に難民条約を批准しているにもかかわらず。さらに日本は、難民受け入れに関してG7の先進国の中でダントツのどん尻であり、6位のフランスですら7.9%と日本の26倍も難民を認定している。認定者の数はと言えば、2011年は1867人の申請者に対し21人、2012年は2545人に対して18人に止まっている。そして、G7の難民認定総数の中で、日本の占める割合は0.04%。実質0%なのだ。いくら政府が国際協調や多様性に富む社会が重要だと唱えても、この数字はそれがウソだということを示している。
*決定総数における認定者の割合
根本さんの本は、ほかにもいろいろと衝撃的な事実を教えてくれる。たとえば、茨城県牛久にある難民申請者も含めた不法滞在の外国人が収容される施設。ここはあまりにも非人間的な環境で、十分な医療も受けられず、精神のバランスを崩す人もいるそうだ。憲法で基本的人権をうたっているのなら、たとえ不法入国者ではあっても、すべての人に対して同じ精神で接するべきだと思うのだが。
日本はどうしてこんなに難民に対して非寛容なのだろうか。これは国民の意思なのだろうか?いや、自分の無知を棚に上げて言わせてもらえば、国民は実情を知る機会がほとんどなかったと言ってよい。もし難民の置かれている実情を知ったなら、さまざまな迫害を逃れてようやく日本にたどり着いた難民たちに、こんなに冷たい仕打ちをして欲しいと思う人はいないのではないだろうか。
ほとんどの政治家にとって難民の問題は重要な問題ではないのだろう。難民の受け入れに奔走したとしても、彼らの票には結びつきそうもない。そして、難民の取り扱いに関して国民からの要求もあまりない。何と言っても国民は情報過疎の状況に置かれているのだ。この件に関しては、メディアの責任は重大だ。メディアはハンガーストライキをする難民のニュースなどを単発的には流しても、国民の理解を深めるために、持続的にそして俯瞰的な視点から難民の問題を取り扱って来たとは言いがたい。
根本さんの本は、最後に明るいニュースも伝えてくれている。それは市民の中に難民を支援する輪が広がりつつあるということだ。個人で、グループで、難民の生活や起業をサポートしたり、企業が難民をインターンとして受け入れたり、あるいは、専門知識を活かして弁護士たちがプロボノ活動を行ったりと、その活動は多岐にわたる。私自身も及ばずながら、まず手始めに、難民の故郷のレシピを紹介する『海を渡った故郷の味』と言う本を買った。そして、何も知らなかった私の目を開いてくれた根本さんの本を、一人でも多くの人に読んでもらいたいと思い、この拙文を書いている。
「私たちは彼らのことを知らなすぎた」というのは、根本さんの本の帯にある言葉だ。この言葉は彼女だけの言葉ではなく、私も含めた多くの人が思うことに違いない。そして、ほんの入り口だけでも難民の問題を知ったからには、もう、知らないふりを通すことはできない。この問題を考えて行くことは、将来の日本をどういう国にして行きたいかということに繋がるのだから。
図書紹介
「日本と出会った難民たち」根本かおる著 英治出版株式会社発行
「海を渡った故郷の味」認定NPO法人難民支援協会発行