昨日、安倍首相はアベノミクスの3本目の矢、成長戦略の第三弾を発表した。それを受けて、株価は急落。つまり、投資家が期待していたほどのインパクトのある戦略では無かったということだ。
同じ日に、出生率が1.41に上昇したというニュースがあった。16年ぶりの1.4台への回復ということで、それ自体はグッドニュースとはいえ、出生率がいささか増えても女性人口総数が減っているので、少子化の歯止めになるにはほど遠い。現在の人口を維持するには、2.0 の出生率が必要なのだそうだ。所得の低下、非婚化、晩婚化、教育費の高騰などさまざまな要因を考えると、2.0を目指すのは至難だろう。そして、現在の出生率が続く限り2300年頃には、日本国民は消滅するという計算になるらしい。
安倍首相がするべきことは、まず、成長の阻害要因は、人口減少だということを明確にすることだ。真の問題は少子化ではなく、人口減少と言うことなのだ。もちろん少子化は問題で、その対策は重要だが、それだけで人口減少を食い止めることはほとんど不可能なのだから。その少子化対策としてもインパクトに欠けること、はなはだしい。例えば、政府は先日、「女性手帳」を配布しようとしたが、ブーイングの嵐が巻き起こったことは記憶に新しい。この件で街頭インタビューに応じた女性が、少子化の問題を女性に押し付けているようで不愉快だと述べていたが、さまざまな面での女性と男性の格差是正の対策を取ってこなかった政府が、この期に及んで、女性に子どもを産むことをお願いしても、そう簡単に納得できないのは当然だ。そんな手帳を配るくらいなら、婚外子差別を無くす法律でも作る方がずっと効果があるだろうに。
政治家たちは、日本の人口減少に歯止めをかけるには、少子化対策だけでは難しいということを分かっているはずだ。いろいろな数字がそれを表しているのだから。そして、いまや移民を受け入れることしか、人口減少を食い止めることが難しいことも分かっているのだと思う。移民受け入れは、メリットばかりでなく、もちろんデメリットもある。けれど、私が不思議に思うのは、あれだけ成長戦略に政権の命運を賭けている安倍政権で、移民に関する議論をしている様子がチラとも見えないことだ。
先日、シンガポールのリー・クアンユー元首相が、「移民を拒む日本は、政策を変えない限り、人口が減り続け、ついには滅びる」と発言した。これだけ言われても、反論もせず、なおかつ、移民問題に正面から向き合わない政治とは、一体なんなのだろう。
インパクトのある政策を提示しない限り、アベノミクスが機能しないことは、今日のマーケットの反応で明らかだ。今までとは次元の違う政策で、世界を驚かせれば、世界は日本を買うだろう。そして、経済上のメリットを別にしても、日本には寛容な国になってほしい。日本に来て働きたいという外国人には、難民にも移民にも門戸を開けて、多様性に富む国になってほしい。それこそが成長戦略そのものとも言えるのだから。